フレンド

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 *****  十一月ももう終わるといった日の朝、レオはいつも通り仕事に行くと言ってアパートを出ていった。部屋を出ていく際に頬にキスをされ、春人は些か驚いたが、それ以外は彼のほうもいつも通りレオを見送った。  しかしレオは夜になってもアパートに戻らなかった。心配になった春人は電話をしたが、レオは出なかった。  レオは翌日もその翌日も帰ってこなかった。そして四日目の朝、ああこれで終わりなのだと春人は悟った。  本以外のレオの私物がすべてなくなっていることに気付いたのはそのときだった。彼は最初からこの部屋を出ていくつもりで、仕事に行くと嘘を吐いてアパートを後にしたのだ。  春人は本棚の前に座り込む。喪失感はあったが、泣きたい気持ちにはならなかった。それから春人は意味もなく、レオが置いていった本の背表紙を指でなぞっていった。
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