愛するということ

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 *****  春人は長野駅の改札前で北見と別れ、本郷駅で電車を降りた。そのままの足で、駅から徒歩数分の場所にあるアルバイト先の飲食店へと向かう。着いてすぐ更衣室で着替えを済ませ、ホールに出た。  北見の妻は二年前に逝去した。春人はそのことを行為の直前に聞かされた。これは浮気ではない。自身にそう言い聞かせたかったがために、北見はその話を持ち出したのだろう。不謹慎ながら、春人もその言葉には安堵させられた。浮気だと思いながら行為をするのでは、少なからず気が引けてしまったはずだ。そう考える一方で、これが浮気だったなら余計に興奮していたかも知れないという考えが春人の頭に浮かび、自身の愚かさを改めて感じた。  終始体に若干のだるさを感じながら、春人はアルバイトを終えて帰宅した。八畳のワンルームの部屋は、家賃も広さも一人暮らしにはちょうどいい。春人はバックパックを床に放る。まかないを食べたため夕食は不要だった。春人はシャワーを浴び、ベッドに入った。
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