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「……っ」
引き止めたい、行かないで欲しい。
できることなら今すぐにでも彼の背を追いかけて、みっともなくとも泣いて、縋って、足止めしたかった。
ーー行かないで。
置いて行かないでください。
そう声に出したいのに、色々な考えが芥の頭を過ぎって、言葉を出せなくさせていた。
ここで自分の我儘を押し通して、伊東と一緒に江戸に行っても、うまくいかないことは目に見えている。
行けば伊東に余計な気苦労をかけるだけで、芥ができることなんてたかが知れている。付いて行けば、また自分のせいで彼を巻き込んでしまうかもしれない。
そして芥が一歩を踏み出せない理由は、もう一つあった。
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