第十章 さようなら

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3 ーー二年後ーー 芥がいつものように道場で稽古をしていると、がらりと開いた戸の隙間から和尚の顔が覗いた。 「篝、ちと一休みせんか?」 「はい」 そう返事をし振り向いた芥の顔立ちは、まだあどけなさが残ってはいたが、背や手足が伸び、身体の線はしなやかな曲線を描き、少しずつではあるが少女から大人の女性へと成長していた。 「近頃は一段と精が出ておるのう」 「先生を、がっかりさせたくなくて」 そう言って芥が微笑むと、和尚もつられるように小さく微笑んだ。 芥が伊東と別れてから二度春が過ぎ、蒸し暑い夏も終わって秋を感じる季節になった。
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