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ずっと女子校育ちで、家族と使用人以外の男性とは、口を利くことがなかった。
なのに、大学入学と同時に始まったのは婿探し。
桐蔭(とういん)家のしきたりで二十歳の誕生日、生涯の伴侶を決めなければならないのだ。
「お嬢。
いい男がいるといいな。
俺としては成澤のお坊ちゃんあたりがお勧め」
初めてパーティにひとりで出席した日。
会場に私を送り出しながら、愉(たの)しそうににやにや笑っている章史さんにはぁっ、心の中でため息。
ヤキモチを妬いて欲しいとまでは云わない。
でも、せめて、少しくらい嫌がって欲しいと思うのは、高望みなんだろうか。
「では行って参ります」
緊張で手が震えてる私のあたまにぽんぽん、章史さんの手がふれた。
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