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「心配しねーでも、ちゃんと控えてる。
あぶねーことになりそうだったら、すぐに助ける。
安心して行ってこい」
「……はい」
にかっと歯を見せて笑う章史さんに、ぎこちないまでも笑顔を返す。
手の震えはいつの間にか止まってた。
会場に入ると注目された。
婿探しの話はすでに広まっている。
元華族で世界に名だたる桐蔭グループ総帥の一人娘。
手に入れたい人間は五万といる。
皆、牽制しあって話しかけてこないので、これ幸いと壁の花を決め込んだ。
遠巻きに、ちらちらと視線を送られながらひそひそと話されるのはあまりいい気分ではないが、話しかけられるよりはまし。
「桐蔭さん」
しばらくたってかけられた声に顔をあげた。
立っていたのは絹川家の次男。
「お暇、ですか?」
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