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お婿選びには困難がつきものです。
……はぁーっ。
ドレスを着るとため息が漏れる。
やだな、パーティ。
自分の誕生日を祝うために皆集まってくれているとわかっていても、逃げ出したい。
「これは俺からのプレゼント」
こそこそと執事の章史(あきちか)さんの手が私の耳元で動き、離れるとピアスのパールが揺れていた。
いままでは大きなくまのぬいぐるみなんかで、子供扱いされるのが嫌だったのだけれど。
私の頬にふれたまま、なぜが章史さんはじっとしている。
「章史さん?」
「誕生日、おめでとう。
もう気軽に、お嬢とか呼べなくなるのかな」
声をかけると、鏡越しに目があった。
僅かに口端に笑みを載せると、すいっと頬を撫でて離れる。
いつもはネクタイを緩め、シャツは第二ボタンまで外したりと、着崩してる執事服だけれど。
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