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カタカタカタ カタカタカタ 暗い部屋に響く音 カタカタカタ はぁ…… カタカタカタ 時々混じる溜息 時計の秒針が一定のリズムを刻むものだから、私たちみんなで音楽を奏でているんだ、なんて我ながら面白い発想に辿り着く。もしそうなら、この暗闇の中で私を照らすこのパソコンの光はさながら主役を照らすスポットライトというところか。 カタカタ はぁ…… 手元のキーボードから手を離し、目頭を揉んで一息。今日の仕事もあと少しといったところか。 「おし、お疲れ様でしたー」 「おう、お疲れ様」 「主任も早く上がった方が良いですよ、どうせ明日も早いんだから」 部下の言葉にモニター右下の時刻に目を向ける。 23:15 気がついたらもういい時間になっていた。時が過ぎるのは早いものだなぁ。 「気を付けて帰れよ、奈良坂くん」 「俺、夜行性なんで」 「ふふ、そうだったね」 そういって出ていく姿を見送ってモニターに向き直る。すると「あ、そうだ」とこちらに近づいてくる奈良坂くん。 「これ、いつものお返しです」 コン、と硬質な音を立てて缶コーヒーが置かれた。 「悪いね」 「主任のマネです」 「からかってる?」 「さぁ?」と軽く笑った奈良坂くんは「お疲れ様でしたー」と改めて別れの挨拶をしながら踵を返してスタスタと歩いていく。 夜まで続く夏の暑さから逃れるように私は冷たいコーヒーを一口流し込み、手元の楽器をまた奏で始めるたのだった。
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