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翌日、雅人が両親揃って家にやって来た。
美波ちゃんは旅館の仕事にまわり、兄と母が私に付き添ってくれた。
数日ぶりなのに、客間で顔を合わせた雅人を見て懐かしく感じてしまう。
胸が締め付けられるような息苦しさを感じながら、テーブルを挟んで座った。
「この度は、愚息が本当に申し訳ありませんでした」
雅人と両親が座布団から下りて土下座した。
こんな光景見たかったんじゃない。
「謝罪されたところで、はいそうですかって言える話じゃないですよ」
静かな部屋に兄の声が響く。
雅人の顔は畳に向けられていて、表情が見えない。
「葵、あなたが聞いたことは事実なの。婚約破棄でいいわね?」
母は凛とした姿勢で座り、こちらを見ずにそう言った。
雅人はチラッとこちらを見て、また深く頭を下げた。
私は立ち上り、フラッと彼の後ろに座る。
兄や母が心配そうに私を呼んだけど、私は何も応えずに、雅人のジャケットの裾を少し引っ張った。
雅人も雅人の両親も、兄や母も私を見た。
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