エピローグ

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秋はボトルで、3人で乾杯をする。 「秋、車?バイク?」 「車」 「飲んじゃダメだよ」 「大丈夫。マネージャー同行だから」 そう言われて、ホッとした。 秋がボトルを前に出す。 「葵、発声」 「あっ、うん―」 私は零さんの墓前に目をやる。 「零さんに」 「零に」 「乾杯!」 私の発声に3人で乾杯を交わす。 秋はボトルをいっきに飲み干し、私はグラスの半分くらいを飲んだ。 「朝からの酒は旨いな」 「だね」 「零も喜んでるな」 私は頷く。 前回お墓参りに来たときは、こんな晴れやかな気持ちではなかった。 押し潰されそうだった。 あの時香った秋の香り― 「秋、零さんのお墓に来たのははじめて?」 「いや、今年は命日くらいに…ちょっと遅れてだけど来たよ」 秋はそう言ってお線香を立てて、手を合わせた。 命日をちょっと遅れたくらいに… あれはやっぱり、秋だったんだと確信する。 零さんの墓前に腰を落として手を合わせる秋の後姿。 零さんは秋と私を引き合わせてくれる。
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