エピローグ

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「煙草吸いに出たの?」 「そう」 「戻らないの?」 「俺ら居なくても大丈夫だろ」 テラスに並んで立ち、私は周りが気になる。 「大丈夫」 秋がその仕草に気づいてか、私にそう言った。 「何が大丈夫なの?私、イヤよ。もう前みたいになりたくない」 私の言葉に、秋は頷いた。 「もう離れたりしないよ」 「えっ?」 「もう離したりしない」 そう秋が言い切った。 「大手海外レーベルとの契約が決まった」 秋の突然の発表に、私は驚いて一人歓声を上げた。 「おめでとう!秋!」 秋は嬉しそうに頷いた。 「まだまだインディーズではじまったばかりだから。もっともっと挑戦したい」 「うん」 「行けるとこまで行きたい」 「うん」 「葵、そばにいてよ」 秋の言葉に息を飲む。 「一生そばにいてくれ」 夕陽が沈みかけた真夏の眩しい夕方。 秋が眩しくて、涙が出る。 「葵?」 言葉にならないまま、私は深く何度も頷いた。 「ちゃんと返事してよ」 秋の言葉に気持ちを整える。 「…はい。いつまでも」 それを聞いた秋の笑顔が眩しかった。
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