エピローグ

13/15
16490人が本棚に入れています
本棚に追加
/504ページ
―翌日のまだ夜が明けていない時間に、私と秋は出発した。 レンタカーで秋の運転。 助手席に乗って、地元を目指した。 「実家に連絡した?」 「したよ」 「急に申し訳ない」 「大丈夫だよ。お兄ちゃん夫婦の驚きと興奮が半端なかったけど」 秋が運転しながら笑う。 「お兄ちゃん、3月のクラムのチケット手に入れるのに友達に5倍の値段で譲って貰ったんだって」 「えっ!?」 「お前らの幸せは俺の身を削ったおかげだって」 秋は声を上げて笑う。 「数曲しか聞かずに出たのは内緒にしててね、お兄ちゃんにバレたら…」 「叱られる?」 「苦労話を延々とされるよ。今日中に東京に帰れなくなるよ」 「それはまずいな」 また秋が笑う。 「お母さんは?」 母… 兄とは正反対で母は電話先ですごく落ち着いていた。 "そう。気を付けていらっしゃいね。待ってるわ。" でも、声は震えていた。 「気を付けてねって」 「うん、安全運転で行こう」 秋は私の表情で気持ちを汲み取ってくれていた。
/504ページ

最初のコメントを投稿しよう!