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「……美波ちゃん」
「うん?」
満月の明かりだけの部屋なのに、意外と明るい。
美波ちゃんの表情も見える。
「どうしてだろ……」
私は食べかけの茶碗蒸しをお盆の上に置いた。
「雅人からも…梨沙子からも…何も感じ取れなかった……」
「やましいことがあれば人は隠すものよ。隠してるものを見つけるのは難しいわ。それが信頼していた人であれば特に……」
美波ちゃんは私の両手を包むようにして両手を握る。
「それでも…全く何も気づかないなんて……」
ポタポタ涙が落ちて、美波ちゃんの手に落ちる。
「いつからなのかも……わからない……。何が本当なのかも……わからない……」
どこからが嘘で、どこまでは本当なのか……それとも全部嘘だったのか。
次々に溢れる涙に、息が荒くなる。
泣きすぎなのか、暫くぶりに食べたからなのか気分が悪い。
「葵ちゃん?大丈夫!?」
その場で少し嘔吐した。
美波ちゃんはハンカチを出して私の口元に当ててくれた。
そして、落ち着くまでずっと背中を擦ってくれた。
「無理に食べさせてごめんね…」
そんなことを言ったりしながら擦ってくれた。
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