さくらウイルス

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乗降客の騒音が、彼の声をかき消してしまう。 「聞こえなーい、もう一回言って!」 空気の抜けるような音とともにドアが開く。 『……してるよ!愛してる!愛し……聞こえてる?』 騒がしくなったホームからは、きっと私の声も届いていないのだろう。 それでもちゃんと伝わってくる。 大丈夫。 充足感で電話を切る直前、もう一度、彼が言った。 『まじで……愛してるよ』 骨にまで響くような彼の滑らかな声。 ほらまた私、感染してる。 スマホをポケットの奥にしまい込んで、電車の窓にへばりついて笑みをこぼした。 心が熱を帯びてきて、私の頬がまた桜色に染まり始めている。
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