0人が本棚に入れています
本棚に追加
乗降客の騒音が、彼の声をかき消してしまう。
「聞こえなーい、もう一回言って!」
空気の抜けるような音とともにドアが開く。
『……してるよ!愛してる!愛し……聞こえてる?』
騒がしくなったホームからは、きっと私の声も届いていないのだろう。
それでもちゃんと伝わってくる。
大丈夫。
充足感で電話を切る直前、もう一度、彼が言った。
『まじで……愛してるよ』
骨にまで響くような彼の滑らかな声。
ほらまた私、感染してる。
スマホをポケットの奥にしまい込んで、電車の窓にへばりついて笑みをこぼした。
心が熱を帯びてきて、私の頬がまた桜色に染まり始めている。
最初のコメントを投稿しよう!