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 脳は、一秒で恋をする。   昔、どこかでそんな言葉を聞いた覚えがある。それはつまり、漫画や小説でお馴染みの“ヒトメボレ”というものなのだろうか。    でもそれは現在の世界ではあり得ない。政府が50年前から公布した『国民皆平等宣言』によって自由な恋愛が廃止されたからだ。私達、国民は齢25になれば政府より各家庭に結婚相手の記載した通知が送られてくる。結婚相手の写真、氏名、職業、趣味、好き嫌いに国民コード。国民コードとは挙式や家を建てる時など大きな買い物をするときに利用する個人証明に用いるカードだ。このカードが有る限り私達は政府に管理されているという認識を捨てることは出来ない。籠の中の鳥を判別する為のもの、という訳だ。    この世界には管理するものと管理されるもので溢れている。私達が生きるために必要な酸素。口から吐き出される二酸化炭素。その割合はいつも変わらない。どれだけ人口数が増えても、酸素濃度は一定、各土地に設置された酸素排出機から定期的に排出される。 街中に彩りを添えられている花壇。花は透明のガラスの中で永遠に生き続ける。昔は造花を飾っていたらしいが生花と造花では色合いが若干異なるそうで資産家が率先して資金援助をして研究が進んだそうだ。  この世界に虫はいない。 書物上に描かれる害虫も資料の中でしか見たことはない。空を駆ける鳥は地上から放映された映像で、そよ風が吹くことも植物の花弁が舞い散ることもない。恋愛などもっての他だ。             この世界は透明な小さな箱だ。           各街ごとに大きなパイプで繋がれてそのパイプを通りそれぞれの街へ移動することができる。 私達は病気にかかることもなければ、感染症にかかることもない。 病気は内部で起こるものだけだ。 その証拠に私はまだ1度も病気で医療施設にかかったことはないのだ。
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