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シロとクロ。モノクロで統一された教室は完全に担任の趣味だ。実験室とは名ばかりの部屋で行われる授業は理科というより寧ろ歴史に近い。過去の出来事に興味津々の担任はテスト中もお構いなしにその時々の興味の的について喋り倒す。今日はなんの話が出るだろう。
「今日の授業は生物だ。斎藤、虫とはなんだ」
一番前の席に座る坊主頭の男子生徒が餌食になる。斎藤くんは唸りながら一言、「もういないイキモノ」と答えた。
「微妙な答え方をするな、お前。虫とは蟲とも書く。昔はそこらじゅうに飛んでいたらしいが今は見当たらない。虫には無害のものと有害のものがいる。有害の虫はなんという?彩葉」
「害虫です」
「宜しい。そのままの字だな、そもそも虫とはー」
担任は面白くてたまらない表情でタブレット端末を操る。教卓前のスクリーンには足が八本生えた蜘蛛や大きな針を持った蜂の図が並ぶ。気色悪いものが基本的に嫌いな女子生徒たちの悲鳴が上がる。あれじゃただのいじめっこだ。
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