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まず、いつも帰る道とは逆に進んでみた。突き当たりを右に曲がると寮があった。ここは家を探していた時に候補に挙がっていた寮だ。一度も行ったことがなかったからまさかこんな近くにあるとは知らなかった。ここにはまだ住み始めて一年だから知らないことがたくさんある。ここに住んでいる友達も同じ状況だからこの土地について教えてくれるのは地元の床屋さんくらいだ。初めて見る道を行ったり来たりしている内にだんだん道のつながりがわかってきた。川沿い、小学校、保育園、広場などに桜が咲いていた。広場では学校帰りの子供たちが野球をしていた。完全に偏見だが、東京に広場や公園といった遊び場はないと思っていたので、元気に遊ぶ彼らを見て安心した。塾講師をしている身で言うのもなんだが、子供は外で思いっきり遊ぶことが大人が思っているよりも重要で大切なのだと思う。見慣れた道が現れたので南東から北に進路を変えた。この辺りから大通りが増えてきた。東京の大通りで自転車を漕ぐのはなんとも怖い。私は田舎出身なのだが自転車は当たり前のように歩道を走る。歩行者が全然いないため車道より安全だからだ。しかし東京では基本的に車道を走る。でもたまに歩道も走る。この線引きがどうにも難しくて交通整理をしている警官の前をどっちを通って進むべきか非常に悩んだ。悩んだ末、通るのをやめた。
そしてもう1つ群馬と大きな違いがある。それは踏切の変わり目で突っ込む人がいることだ。群馬では鳴り始めてから渡る人はまずいない。だから気を抜いていたらギリギリに突っ込んで行く人たちとぶつかりそうになった。これを見て初めて「踏切を渡りきれない人がいたため停車致しました。」という車内アナウンスの意味を理解した。踏切を渡るとさらに交通量が多くなったのでここら辺で引き返すことにした。帰り道もよくわからないので迷いながら進んで行った。
こんな時、一番恥ずかしいのが私道に迷い込んでしまうことだ。小学生の時に間違えて違う教室に入ってしまった時のような感覚に似ている。なんとか私道の入り乱れる駐輪場の近くまで来た。その私道の一つでシャボン玉を飛ばす女の子とそれを追いかける男の子がいた。
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