1話 始まりとハーフサキュバス

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1話 始まりとハーフサキュバス

「あなたは転生する権利を得ました。おめでとうございます」 真っ白な場所、そこはどこまでも続いているようで、それでいて空間そのものがないようにも感じる。目の前の事について理解ができず、頭の中はフリーズ状態。 俺は寝起きは悪い方だと自負している。 「あの…」 誰も居ないと思えばすぐそばから声が聞こえる。これはなにかしらの夢なのだろうか。そう思うととても穏やかな気持ちになった。 「あ、あの!すみません。私の事、見えてますか?」 …見えてますかって言われても、なにもない。なにもいない。 ふと自分の体はあるのだろうかと思い、自分の足があるであろう場所や手を目の前に動かしたり触ったりしてみる。しっかりと自分の体があると認識ができた。 というか制服を着ていた。長袖だったシャツは7部丈くらいに折り曲げられ、首をぴったりと閉めていたはずのボタンは2個ほど外れている。ネクタイも緩められている。 そうだ、確かに学校から帰ってきて、それから… 「そうです。あなたは死にました。お疲れ様です」 …お疲れ様ですって、そんな仕事終わりみたいに言われても。 全く死んだという感覚がない。これはただの夢なのだろうか。いや、夢だ。だって普通ではないだろう。 思春期に見る夢とは怖いものだ。 「あの、そろそろ喋ってくれませんか…沈黙が辛いです」 しゃべろと言われても、誰も居ないところで、ましてや知らない場所で独り言を言うとか嫌だ。誰かに見られたり聞かれたりしたらあの人頭おかしいんじゃない?って思われるかもしれないだろ。 今聞こえているこの声だって、ただの幻聴かもしれない。 「…やっぱり、私の事が見えてないんですね…」 はぁぁぁ~っと少しばかり長い溜息をつかれても俺だって困る…
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