第1章

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「大丈夫ですよ!中川さんは私がセクハラされていたから気にしてくれてるんだと思います」 成宮さんはフーンという表情を浮かべて「待ってるわ」と言い残して窓口を出て行った。 わたしも後処理を終えて内務に戻って締め処理を始めた。 「印鑑漏れ多いですね」 「本当大事な書類なのに印鑑から計算間違いから提出してない書類まで.......何をやってるんだか」 ため息をつく成宮さんに苦笑いしながら作業を続けた。 私は入社して約半年、猫をかぶりながら仕事をしていた。 大人しくて何をしても騒がないと思った上司が誰もいなくなるまで残業させたりパソコンを打ち込んでる背後に立ち耳元に息をかけたり。。。 その行動がエスカレートして内務からの死角になる窓口でいきなり抱きついてきた。 元々大人しい性格ではない私がそんなのを我慢すること自体ちゃんちゃらおかしいこと。 パソコンの打ち込みの時に決意したこと。 次にしかけてきたら必ず行動に移すと。 好都合だ。いくら死角になると言っても日中の人の多い時間帯にやってくれた。 私はニヤッとしたはずだ。後ろから抱きついてる上司には見えない。 私は無言で上司を引きずり内務に突き飛ばした。 「自分が何したかわかってんのか!後ろから抱きつくとかセクハラだろうが!無意味な残業までさせやがっていい加減にしろや!」 当然周りはポカーンとしている。 支店長と課長が仁王立ちの私と地面に座り込んでいる上司の元に来る。 「な、な、なにを証拠に!」 セクハラ上司が言葉を出す。 「お前バカか。窓口にはいくつもの監視カメラがあること、知らなかったのか」 普段大人しい私が怒鳴りつけ、不敵な笑みを浮かべてる姿に誰も何も言わない。 「支店長、課長、私は坂野さんがセクハラされていると入社当時から相談を受けてきました。コンプライアンスに訴えようと言ってもセクハラにあたるのかわからないから待って欲しいと言われていたので記録だけはしてあります」
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