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その頃、心国は地道に町の発展と軍備の強化を行い、トウマを中心に国力を高めていた。
前線で侵攻を防ぐゾイの存在は大きく、心国も予想を超えた速さで、驚くほどの急成長を遂げる。そして、レナは各国に放った密偵の報告を受けていた。
「軍議を始める。順次報告せよ」
二人の文官がトウマの前に立ち、その内の一人が報告を始める。
「申し上げます。始国は特に変わりが無く、軍備の強化をしております。続いて堅国ですが、こちらも変わらず建築士セロンを中心に防備を高めています」
続いて、もう一人の文官が口を開いた。
「知国は新しい兵器の開発を進め、その為の資金調達に奔走しています。財国は士気が高く、兵力も二十万近くまで膨れ上がっていました」
財国の情報を聞くと、トウマが文官に問い掛ける。
「財の国の兵士は訓練をどう行っていた? それと、武器や防具はどうであった?」
「訓練はあまりしておらず、兵の数のみに力を入れております。そして、武器や防具は良質な物を使っていました」
「よし、ご苦労だった。引き続き情報収集を頼む」
その後も報告が続く中、慌てた様子の兵士が駆け込んで来た。
「ゾイ様から急報が入りました! 財国が二十万の兵を起こし、心国へ侵攻中との事です!!!」
急報の内容に驚き、将軍達が騒めき立つ。
圧倒的な兵の数に慌てふためく姿を見据え、トウマが声を張り上げて一喝した。
「静まれ! 予想よりも早かったが、いずれこうなる事は分かっていた。だが恐れる事は無い。軍師の一族である私と、皆の協力があれば必ず勝てる!」
将兵は一旦静まり返る。そして次の瞬間、歓声が沸き起こった。
「そうだ! 俺達には軍師の一族がいるし、東国の英雄だっている」
「レナ様をお守りして、心国を勝利に導くのだ!」
一気に士気が高まり、国王の間が熱気に包まれた。
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