動き出す国

6/7
前へ
/36ページ
次へ
「俺の推測に一つでも誤りがあれば、すぐに軍を引返してくれ。わざわざ危険を冒す必要は無いからな。それと、コウキを副将に連れて行け。こいつは機転が利くから、悩む時は相談するといい」  頭を下げる青髪の青年は、常に冷静な判断が出来るとして将軍に抜擢された若き人材。  シンドウが言った通り、心国には優秀な人材が埋もれていた。ドイルの横暴により、本当に有能な人物は遠ざけられていたのだ。  軍師の才能を秘めたコウキは、トウマの指示に的確な質問を投げ掛ける。 「トウマ殿、一つだけ質問をさせて下さい。先ずは東国へと言われましたが、東国は中立国です。関所がある為、短時間での進軍は困難かと思われますが?」 「そこで、私が東国王に礼状を書く。ドイルを捕える時に助力してくれた東国へ、礼状と宝物を持って行く……これで関所は難なく通り抜けられるだろう。軍を怪しまれたら、山賊に財宝を狙われない為の護衛と言えばいい」 「成程……それなら東国領へ軍を進ませ、財国の後ろを突ける。しかし、急がないと財軍に気付かれますね」  トウマの与えた策は時間との勝負だった。納得すると、ユウリとコウキはすぐに部屋を飛び出す。  そして、部屋には四人だけとなった。  その中には、場違いな可愛らしい女の子がいる。 「さて、クミとレナ様は出陣の準備をして……」 「ねえ、トウマ君。その子は誰?」 「ああ、そうだった。レンカ、挨拶しろ」 「初めまして、レナ様にクミ殿。レンカです。宜しくお願いしますね」  レンカと名乗る女兵士は、可愛らしく笑顔を振り撒く。 「ゾイがな……部下に可愛い女の子をつけろと煩いから、レンカを副将にしようと思う」  レナとクミは顔を見合わせ、勢いよくトウマに詰め寄った。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加