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先方隊に遅れて一日後、レナの本軍はゾイのいる前線の陣へと到着した。
トウマはレンカを連れて陣中を見回り始め、レナとクミは幕舎へと入ろうとする。すると、ゾイが馬に跨り駆けて来た。
「おおっ、レナちゃんにクミさん。元気にしていたかい?」
緊張感を持っていたクミだが、呑気に話し掛けられ、少し拍子抜けしてしまう。その横で、レナは首を傾げていた。
「あの……ゾイさんが槍を持っているのを初めて見ました。凱旋剣は使われないのですか?」
「ああ、これか? 凱旋剣も使うよ。でも、馬上の戦闘では間合いを考えると圧倒的に槍が有利なんだ」
「そうですか。ふふっ……ゾイさん、かっこいいですよ」
「ハッハッハ! 本当の事を言われると照れるな」
そんなやりとりを見て頭が痛くなってきたクミは、二人を無理やり幕舎の中へと入れる。
「さてと……ゾイ君、状況はどう?」
「状況? そうだな……財軍にクミさんほど可愛い兵士はいなかったぞ。オッサンばかりで汗臭かった。財軍は最悪だが、援軍で来てくれたユイちゃんは美人だったな。レナちゃんも可愛いし、我が軍の圧勝だ!」
……
……
「何の話よ!?」
緊張感は何処かへ行ってしまった。レナも入り過ぎていた肩の力が抜け、ゾイと一緒に笑う。すると、陣中を見回っていたトウマが現れた。
「ゾイ、財の本軍到着は明日の昼ぐらいになりそうか?」
「……到着は明後日の朝だろう。前衛と合流して、恐らく休息を挟むはず。つまり、明後日の昼には御対面だ。奇襲をかけるか? 相手の先方隊は約三万、続いて本軍が約十万、食糧輸送及び警備の兵が後詰で約二万といったところかな。さすがに二十万は誇張だが、ここにいる我が軍の四倍以上だ」
トウマには真面に答える為、クミは怒って頬を膨らませる。
可愛い女の子とは楽しく過ごしたい為、真面目な話をしたくないのだろう……そう考えると、レナは妙に納得してしまった。
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