第6章 設定上の偽彼氏

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幼少期から可愛がられてて許嫁で、会社を継ぐのはうちのだっけ?高城くんちのだっけ?…もう、頭ぐるぐる…。 彼は平然とPASMOで改札を抜け、すたすたとホームに向かう。家の方向と違う、と気づいたがそう言えば加賀谷さんと約束したんだったと肩を落とす。大人しく後についてとぼとぼ歩くわたしを振り向いて穏やかな声で言った。 「いいじゃないですか、別に物凄い大嘘を言った訳じゃありません。あなたに何かあったら間違いなく彼の上司のところに直々に抗議が行って、彼は馘首とは言わずとも二度とあなたの顔も拝めないところに飛ばされることは事実なんですから。前もって忠告してあげただけありがたいって思って欲しいものです」 わたしは黙り込んだ。まぁ、そうね。 うちの家族が大金持ちで社会的地位が高いってのはぞっとするくらいの大嘘だけど、そういう影響力のある方々がわたしのために報復してくれる気があるってことは多分本当のことだ。だったらまぁ、いいのか。…なぁ? 高城くんは独り言のように淡々とした声で呟いた。 「あの感じだと、さすがにもう行動を起こす気にはならないでしょう。得るものと失うもののバランスくらい理解できる頭はあるでしょうし。あなたが護衛をつけたって知って小賢しい、とむきになりかけたのかもしれませんね。いい機会だから、思い切りあいつの鼻先をへし折ってやれてよかったです」 それからふと我に返ったようにわたしの方を見遣った。 「そうは言ってもまだ油断は禁物です。今週一杯くらいは迎えに来るつもりですが、それ以降も絶対に気を緩めないで。いつも携帯を手にして、僕かマネージャーに即連絡を入れられるよう設定をしておいてください。間違ってうっかり鳴らしても問題ないですから、そういう遠慮は無用です。あいつに限らず変な動きを見せる奴がいたら考えるより先に連絡するように」 「…はぁ…、い」 曖昧な声の返事はホームに入ってきた地下鉄の轟音にかき消されて吹き飛んでいった。なんか、釈然としないものは残るけど。 一応これで解決なのか。篠山の奴に何とか一撃も喰らわせられたし。そう考えると。 やっぱりこの人に感謝、しないといけない。…のかな? 「あぁ…、もぉ」 切なく身を捩った。腰もとてもじっとしていられない。…我慢できない、こんなの。 服は全部脱がされて、両手は頭の上で押さえられている。両脚も大きく拡げた状態でぴったり折り畳まれて。
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