第5章 手のひらの中で遊ぶ

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喜んでいい気が全然しない。 何だかがっくり力が抜けたけど、気を取り直して前を向いた。まだ確かめなきゃいけないことがある。 この話を受けるかどうかはともかく、そこが気になって仕方ない。 「そのこと。…何でそんなに確信があるんですか。つまり、わたしがその最中どんな様子か、ってこと…、だけど。何処かからわたしのしてるとこ、見てたんですか。それとも男の子たちから事細かに報告でも受けたの?」 そこで、それまで平静そのものだった彼の態度が初めて少しだけ波立った。わたしの顔から目線を外し、下を向いてやや曖昧な口調で早口に済ます。 「うーんまぁ…、そこは。というか、そうだな。君には、あんまりはっきりと説明したことはないんだけど。…何となく薄々知ってる会員もいるとは思う。けど」 ちょっと疚しさの滲む声。続けられた言葉に思わず唖然とする。 「ここって全室どこも、常時カメラでモニターされてるんだ。一定時間映像は保存されてその上にどんどん上書きされて消される方式だけど。その画像は遠隔でも見られる。決まった人間しか見られないし流出するような恐れはないよ。それは細心の注意を払ってるし、保証する」 がん、と頭を殴られた気がした。…そっか。 この人、わたしがやってるとこ全部見ることができてたんだ。今までも…。 「じゃあ」 我知らず膝の上に置かれた手をぎゅっと握りしめる。 「それを見て、わたしが淫乱で変態でど助平だってわかったってことですか。それで見込んだの?他の会員の女の子たちより、知らない沢山の男たちにいくらされても悦ぶし何されても平気な女だと思ったから?」 「違う、そうじゃないよ。落ち着いて、冷静になって。…勝手に見たのは悪かったと思う。でも、個人的な興味で君の映像を見たりしてはいないよ。誰か管理する人間がここに詰めてる訳じゃないし、そういうものがないと何が行われてるかわからない。安全を確保するためにもどうしても必要なんだ。別に見て変な気を起こすためにそんな設備がある訳じゃない」 真剣な声に、彼が本当のことを言ってるのは伝わってくる。それはわかるんだけど。 確かに、所詮学生だけのメンバーでこんな密室、下手したらどんなことが起こるかわからない。部屋を使わせてる人物からしたらそこをちゃんとチェックして、問題の大きくなる前になんとかしたいと考えてもおかしくないけど…。
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