第5章 手のひらの中で遊ぶ

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わたしは重いため息をついて目を閉じた。理屈としてはわかるけど。やっぱりあんな自分、見られたくはなかった…。 「でも、それを見てわたしが向いてるって判断した訳でしょ。そしたら防犯以外の目的のためにも画像をチェックしてるってことですよね。それは加賀谷さんの役目なの?誰が向いてて誰が不向きかってのは加賀谷さん基準で決まるってこと?」 やけくそ気味にそう尋ねると、また彼は少し落ち着きを失った。言いにくそうに口を開く。 「…それが」 何だよもう。わたしは憮然となった。一体次は何が出てくるんだ。 彼が微妙な表情でもぞもぞと説明したところによると、加賀谷さん以外にもう一人、そのカメラの画像を見られる人物がいる。思えば当然のことなのだがこの部屋のオーナー、加賀谷さんの叔父さんだ。 「あの人は、防犯チェックの目的以外にもう一つ必要があってそれを見るんだけど。つまりこっちのクラブの中で適性があって見所のある、男性を惹きつけて満足させられる女の子をピックアップしてスカウトして、向こうの方に引き入れるために。ていうか、あの人がここをずっと続けている本当の目的は実際それなんだ。向こうのクラブの会員に相応しい女の子を探すためなんだよ」 わたしは思わず加賀谷さんをまじまじと見つめた。…そう言えば、以前に。 彼の友達の人脈がなくなって女性会員を集めるのが難しくなった、って話の時に。今思えばあの時ここを閉めておけばよかったけど、もうそういう訳にもいかないってぽろっと口にしてた。どうしてですか、と何の気なしに問うと曖昧に濁されたっけ。 あれはこういう意味だったのか…。 「そっちのクラブで働く女の子を見つけて勧誘するためなんですね。そういう理由があってここを使わせてたんだ」 彼は苦いため息混じりに肯定した。 「うんまぁ、あの人はね。てか、正確には働くってことじゃないけど。給料じゃなくあくまで特別報酬とか、お礼金みたいなもんで。そんなのどうでもいいかもしれないけど、あくまで性労働じゃなくて愉しみに来るって形に拘ってるから、彼は。…ここが結局元の意味が変わってこんなことになった事実については俺も責任を感じてはいるから。なるべく誰も傷ついたり困った羽目に陥らないよう目を配らざるを得ないんだけどね」 なるほどね。 セックスなんか殆ど関心なさそうなのに。どうしてこの人がこんな場所に関わってるのかは正直気にはなっていた。
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