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「昼間ちょこちょこ顔出すとこあったからな。却って電車で動いた方が効率よかったりするから。停めるとこ探すのが面倒なんだよな、いちいち」
「なるほど」
わたしは素直に頷いた。別にどっちでもわたし的には何の問題もない。タクシーの時はわたしを先に部屋まで送ってから彼は再びそれに乗って帰宅する。距離でいうと彼の住んでる場所の方がここからは近いらしいんだけど。そんな訳でわたしは加賀谷さんがどこのどんな家に住んでるのか全然知らない。訊いたこともないし。
「そう言えば、会社でこんなことがありましたよ」
タクシーで移動中、ふと思い立って雑談のつもりで同期会での出来事を口にした。運転手さんに聞こえるな、とは思ったけどまぁ大した話でもないし。別の同期の男の子とわたしの職場の先輩がガードしてくれる、って話したところで加賀谷さんの横顔が僅かに顰められた気がした。
「地味に目立たないように振る舞えって常々言ってるのに。まぁしょうがないか、その手の奴は何処にでもいるもんな。無駄に嗅覚ばっかり発達してるんだから…。いいよ、しばらくはこっちからガードをつけるから。朝はさすがに大丈夫だろうと思うけど、一応ひと気のないとこは通るな。帰りは毎日黒服の若いのを行かせるから。明日からな。しばらくは定時で帰れるんだろ?」
わたしは反射的に身構えた。
「だからって明日は来ませんよ、クラブには」
彼はちょっと機嫌を損ねたみたいにむくれた。
「わかってる、それは。さすがに俺だって今日の明日でそんなん無理だってわかるよ。あそこまで徹底的に相手してやれば連中だって気が済んでしばらくは大人しくしてるだろ。だけど思うに、一回分がヘビー過ぎるから来るのが気が重くなって足が遠ざかるんじゃないか?もっとそこそこにして間隔を空けないようにした方がトータルでは楽になる気がするけど」
「…うーん」
わたしは腕を組み唸った。理屈ではわかるけど。わたし、始まっちゃうと適度なところで切り上げるってことがどうも上手くできないんだよね…。
「後でLINEで待ち合わせ場所と時間決めよう。行かせる奴決まったらそいつのID知らせるから。細かいやり取りはそいつと直接して」
わたしは慌てて遮った。
「その人だって仕事あるんでしょ。別にいいよ、そこまでしなくても。会社の中に協力してくれる人もいるし。第一そいつが絶対わたしを狙うとは限らないでしょ。
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