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むしろ多分、こっちに狙いがばれたって知ってるんだからもう諦めたと思うな。そこまで執着するとは思えないよ」
あの話し振りからすると、狙い易そうだからわたしに目をつけたってだけで、わたし個人にそんなに拘りがあるとは思わない。いけそうだから行く、ってだけだったんじゃないかな。そう説明したけど加賀谷さんは頑として言い張った。
「お前は本当甘いな。何もなきゃないでいいんだって。むしろ何もないことを確認するためにガードをつけるんだよ。そういう意味で素人なんか駄目。狙ってる奴が様子を見に来てるかどうかも判別できないだろ。二週間くらい送らせて何の気配も感じられなければ解除してやるから。大人しく守られとけ、諦めて」
素人、と断罪された筧くんに胸の内で手を合わせる。てか、普通みんな素人に決まってるじゃん、そんなの。そこを責め立てられてもね。
「でも、その子も帰りは都合つけば送ってくれるって言ってたんだよ。断るのになんて説明するの?夜の仕事の上司が護衛をつけてくれるんです、とか?」
「冗談でも駄目。お前はただの地味でぱっとしないOLなんだぞ。夜は真っ直ぐ自分の部屋に帰って碌に夜遊びもしないの。そういう設定だから」
設定って何だ。それに地味でぱっとしないって、正直過ぎだろ。遠慮もなんもあったもんじゃない。
表に出さずむくれたわたしに取り合わず、彼は事務的な口調で淡々と続けた。
「そんなに深く考えることないだろ。彼氏が心配して迎えに来てくれるって言えばいいじゃんか。別に不自然な話じゃないだろ」
「えーそんな暇な人いるかなぁ今時…」
わたしは上目遣いに考え込む。彼女より毎日仕事早く終わるって、どんな職種の設定だよ。
「それに、会社の近くまで迎えに来てくれるんでしょ。誰かの目に触れるかもしれないじゃない。毎回違う子だったらあんな地味な顔してどんだけ遊んでるんだって思われちゃうよ」
単純にそれはそのまま事実だが。加賀谷さんは顔に渋い色をあからさまに浮かべた。
「面倒だなぁいろいろ。じゃあ、二週間ずっと同じ奴が行くようにするよ、それでいいだろ。そいつの仕事の設定なんか自分で何とか説明考えとけ。てか、そこまで訊いてくる奴もそれはそれで…、ん、と」
不意に何かに思い当たったように狭い車内でぐるり、と隣に座るわたしの方に顔を向けた。
「もしかして。…その同期の男って、お前に気がある感触なのか。
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