何十年目かのバースデー

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 だが、本当の驚きは、もう三十年以上、グッズの新作が出続けていると言うことだ。原作漫画の続編もアニメの新作も出続けている。登場人物は中学生のまま。 「不思議ね。こうして毎年誕生日を祝ってるのに、あなたは歳を取らないまま……。声をあてている声優の人だって、もう還暦なのにね」  私たちが人口の多い世代だから、囲い込むようにして商品をリリースすれば回ってしまうのだと言う。なんでもお金次第だ。資本主義はおそろしい。 「私も歳をとったわ……。でも、ここまできたら、もう」  私はワインを傾ける。  これだけの長い時間と人生を、この愛に費やしたのだ。意地でも無駄に終わらせたくはない。  グラスが空になった。すぐに酔いが回り、私の理性は緩むだろう。  彼は無言だ。それでも。 「とりあえずは、こうやって……」  こうやって話しかけつづけていれば、そのうちには彼の声が聞こえるようになるかもしれない。  技術革新など、待つまでもなく。
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