7

2/2
前へ
/18ページ
次へ
コンビニであんぱんを買った。小さいあんぱんが5つ入って税込100円だ。 公園に寄って用意していた空きペットボトルに水を汲む。 そして、聖地に戻った。 隣のじいさんは横になっていた。 今朝からほとんど動いてないように見える。微かに足が震える。 「じいさん、大丈夫かい?」 気になって声をかけた。 「ああ、あんたか、大丈夫だ」 「今日は収穫、あったかい?」 「いや、風邪ひいたみたいでな。一日お寝んねだ」 「じゃあ、飲まず食わずか」 「…」 じいさんのまわりには食べた形跡が何もない。 手元のあんぱんを見た。寄付のニュースが頭をよぎる。 「あんぱんは好きかい?」 「ああ好物だ」 「これ食べな。3兆円分だ」 あんばん2つを残し、3つ入った袋をじいさんの枕元に置いた。 「すまねえな」 わかるはずのない私の冗談には触れずに、じいさんはそう答えた。 私は苦笑いをした。 それは下手な冗談を言ったからか、冗談を無視されたからか、わずかなあんぱんをじいさんにあげてしまったからか、自分でもよくわからなかった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加