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仕事を終えて、聖地に戻るとじいさんがいなくなっていた。 もしかして娘さんが迎えにきたのだろうか。 「じいさんは?」 なまりのある男に聞いた。 「死んだ」 「死んだ?」 「ああ、朝あんたが出てすぐだったの。うめき声を上げるから声かけたら、大きく息をして、もうだめじゃとつぶやいての。それから、あんたにあんぱんうまかったって伝えてくれって言うと、また寝ての。昼頃気になって起こそうとしたらもう冷たくなっとった」 「…」 「娘さん、来んかったの…」 その言葉には望みは叶わないものだという響きがあった。
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