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一年後、あの聖地に強制退去命令が出たことをニュースで知った。
ふとあのときのあんぱんの味を思い出した。コンビニはどこにでもあるのに足は聖地に向かった。
パチスロ店のモニターは競馬中継を流していた。
あのときのコンビニに寄り同じあんぱんを手にした。
あの聖地は本来の歩行者専用道路に戻っていた。あのときの聖地の住民は誰もいない。
世話役のタカさんもなまりの男もその他の人も一時宿泊施設に移ったのだろうか。
「おう、あんた、あんときの…ふむ、変わったの」
なまりの男だった。
私を見る男の目は羨望を意味するのか、軽蔑を意味するのか、判断つかなかった。
「そうじゃ、あの世話役、殺されよった。ピンハネしとったからの。恨まれとったんじゃろ。金も持ってたしの」
良い思いをした人は罰があたると言いたいのだろうか。ならば、私はどうなのだろう。
「食べますか?」
そう言って、私は小さいあんぱんを一つ口にした。
「うまそうじゃの」
私はもう一つ取り出すと残りの三つを袋ごとなまりの男に手渡した。そして、私はあんぱんを食べながら聖地を後にした。
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