3輪 学級委員長『日向 葵』

1/3
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ

3輪 学級委員長『日向 葵』

週明け、教室に入ると手に包帯を巻いている僕を見るなり、学級委員長があわてて駆け寄ってきた。 「沢木君! どうしたの、この怪我!!」 いきなり手首を捕まれて、反射的に肩を跳ねさせる。 驚いている僕に、委員長は心配そうな目を見つめてきた。 このクラスは変なやからが多い。 女好きの懸(かける)といい、熱血な学級委員長といい……。 何故、そう騒がしいのか理解に苦しむ。 「あ、委員長、実は……」 「懸」 委員長に事実を言いかけた所を、慌てて止めた。 もし、僕に起きた出来事を言いふらされたら、余計に危険な状況に追い込まれる。 それだけは避けたい。 「どうか、したんですか?」 不思議そうに問いかけた委員長に返す言い訳を、全力で考える。 嘘をつくのは、得意ではないから。 なるべく平然を装いながら頬を掻いた。 「昨日、夕飯作っているときに、皿を割ったんだ。それで少し切っただけだから、大袈裟にしないでくれ」 「……本当ですか?」 「嘘を言ってどうする」 「ですが……」 委員長が口ごもったとき、その背後からヒョコヒョコと顔を覗かせている女子に気づいた。 その女子の横にいる生徒に、懸が駆け寄り、手を掴んだ。 「なずなちゃん!! ……と村崎さん。おはよう」 「……相変わらず鈴くん温度差有りすぎ」 苦笑いの白井さんと、隣で青筋を立てている村崎さんのコンビ。 最近では、村崎さんと懸のやり取りも、名物と化していた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!