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1輪 はじまりは皆既日食
何十年ぶりかの現象に……
日本中が、沸きだっていた。
ニュースは既に、ソノ現象が起きる前から、ソノ話題で持ちきりだ。
さして興味がない僕は、出された朝食を食べて高校へと向かった。
電車内でも、ソノ話題で年齢問わず盛り上がっている。
沢木京介(さわき きょうすけ)高校二年の16歳。
空想や目には見えないものに関心がなく、すべての不思議な事柄には、何らかのトリックが使われているとして、大して驚かない性格。
だから今回のソノ現象も計算上、導き出されたのが、たまたま"今日"だっただけであって、何をそんなに珍しがることがあるんだろうかと思ってしまう。
物理の教科書から、不意に窓の外を見た。
空はまだ、何の気配も感じない。
自然の現象であれど、さまざまな法則や計算上で成り立っている。
この世に説明のつかないモノなんてない。
電車を降り、単語帳を捲って歩いていると後ろから背中を叩かれた。
「京介、おはよ」
「懸、なんだ同じ電車だったのか??」
「あぁ、今日は朝練が休みだったからね」
鈴 懸(すず かける)。
同じ高校二年生で、小学校からの幼馴染。
穏やかで爽やかそうな外見とは裏腹に、色恋沙汰に目がない。
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