2輪 不可解な状況

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「そう言わず、貰ってください。明日引っ越すので、ご近所さんに配る粗品で申し訳ないんですけど……」 母親はペコッと頭を下げて、ユリは手を振りながら帰っていった。 二人を見送っていると、見慣れた制服の女子が一人、駆けていった。 その背中は、どこかで見たような気がして、眉間にシワを寄せて考えた。 だが、直ぐ入れ替わるように、懸(かける)と警官が走ってきたため、考えるのを止め、二人に事情を説明した。 当事者である子供も居なかったため、警官は交番に戻り、僕と懸は懸の家へと向かった。 「それにしても、京介が子供に声をかけるなんて意外……まさか、ロリコンだった??」 「そんなわけあるか、仕方ないだろ僕しかいなかったんだから」 「そういうことにしておきますか。で、その箱の中、なんだろうね??」 「関心があるのは、俺より箱なわけな??」 懸の部屋につき、ユリの母親に手渡された箱を指差されると、ひきつりながら包装紙を剥がした。 そして、段ボールの蓋の部分に手をかけた瞬間、指先に痛みが走る。 「いっ!!」 滴る赤が、白い包装紙を色付けた。 人差し指と中指の腹から、ポタポタと鮮血が流れる。 「なっ!!京介?!」 懸に手首を捕まれ、即座に心臓より上に上げられた。 近くにあったハンカチで指を包まれる。 「……段ボールの痛みじゃない……もっと鋭くて、……懸、カッターナイフで蓋をこじ開けてくれ」 「わ、分かった……」 慎重に蓋を剥がし、蓋の側面を見た僕たちが目にしたのは、波打つ段ボールの空白部分を埋めるかのように、びっしりと敷き詰められた薔薇の棘とカミソリの刃。 そして、箱の中身を見て目を丸くする。 「なんで、こんなもの……」 「わからない……だが、こんなもの近所に配るわけないと思う……」 その中に入っていたのは、綺麗な黒ユリのプリザーブトフラワーと、意味深なメッセージカード。 『さぁ、ここからが始まりだ』
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