死神の鎌

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夜。俺は街明かりを見下ろしていた。 今回、組織に与えられた潜伏場所は、マンションの904号室だ。 近隣には小学校があり、家族世帯が多い。 そこに、今日、俺は越して来た。 俺はベランダのフェンスに両腕を置き、たばこをふかす。 夏の蒸し暑い風が煙を顔にまとわりつかせる。 俺は目を細めて、街を見る。 右も左も、上も下も、明かりにあふれている。 そこには人間がいる。俺の鎌は彼らの首に落ちるだろう。 「ねえ、おじさん。月、きれいだね」 俺は目を右に向けた。 二本の足がぶらぶらと宙を蹴っていた。 それは敷居の向こう側、隣室のベランダだった。 一人の娘が細いフェンスに器用に尻をのせていた。
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