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「おじさん、月、きれいだね。そう思わない?」
「……お前はそこで何をやっている」
「うーん、自殺?」
「そうか」
「おじさん、私のこと、引き止めてくれないんだ?」
「どうせ、もうすぐ、お前は死ぬ。今死のうと、その時、死のうと大差ない」
「その時って、いつ?」
「俺が咳をする時だ」
娘はケラケラと笑った。
「おじさんの咳で、私、死んじゃうんだ」
「お前だけではない。この街の全住人が死ぬ」
「おじさん、マジで言ってるの?」
「俺は『死神の鎌』だ」
「死神の鎌?あーあ、なんか馬鹿らしくなっちゃった。じゃあね、おじさん」
娘は足をフェンスの後ろにまわした。
俺は窓が閉まる音を聞いた。
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