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「でもよギル。さしあたっての課題は善行を積むことだろ? もしかしたら幽霊さんの方は死に至るまでの過程、遺体の場所。そういうの探してほしいかもしれねぇぞ。幽霊さんも成仏して村の人間も助かる、一石二鳥じゃねぇか?」
相棒の言葉にギルは思案した。
それも一理ある。
ところがその幽霊たる者が現れないことには話にならないのだ。
「今日で三日か。村の住人のほとんどがこの辺りで子どもの幽霊を見たっていうから幻ではないだろうし。うーん、アルフの言う通りそれを解明してあげないと僕らの前には出てきてくれないのかなぁ」
「お前の魔術で湖の中に潜って探索すりゃいいだろうよ」
「僕の魔術が特殊なの知ってるだろ。水中探索なんて魔素も多く使用するから、疲れるし効率悪いよ。あ、いっそ炎の魔術で水全部蒸発させたら早いかな。なんかこの湖、水位が下り始めているようだし。ほっといてもその内なくなるんじゃない? 早まっても問題ないでしょ」
「おいおいおい! ヤメロ阿呆! んなことしたら現状湖に住む生き物が死ぬし、森の動物共も水飲み場がなくなって大変なことになんだろ!」
善行積むどころじゃねぇよ、と耳元でアルフが騒ぎ立てるのにうんざりとし始めたその時だった。
突如、服の裾を引っ張られる感覚にギルが勢いよく振り返る。
肩ではバランスを崩して落下しかけたアルフが爪を立てていた。
そこには小さな女の子がひとり。
真っ白な手は怯えたように震え、然ししっかりとギルの服を握りしめていた。
いくら話に夢中であったとしても、彼が他人の気配を感じ取ることが出来ないなど有り得ない。
すると少女は、今しがたこの場に『現れて』
ギルの服を握ったのだ。
「このガキ、生きてる匂いがしねぇな」
「うん、噂の子で間違いないだろうね。しかも実体を持っているなんて--予想外だ」
しかし少女の身なりを見てギルは頭に疑問を浮かべる。
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