赦し

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冷たい空気に包まれながら、ブランコに座ってぼうっと虚空を見つめていた。妹は闘病中よりずっと痩せていて倒れてしまいそうだった。抱き抱えると、その軽い体にぞっとしたのを覚えている。再び動いている妹を見ることができればいいと思っていた。でも、どうしようもなく分かってしまった。動いていても〝生きて〟なんかいない。そして、妹に再会できたときの幸福感や満足感は既に薄れ、家が近づくほどにもう一度妹を失う恐怖が膨れ上がっていった。それに、これからどうすればいい。本当の意味で食卓を囲むこともできず、会話することもできない妹とどう過ごせばいいんだ。 家に着くと、母が出迎えた。母は一瞬恐ろしいものを見たような顔をした。母の表情には、不安が見えた。リビングに入ると父が呆気にとられて開いた口が塞がらないといったふうだった。俺は妹をソファに下ろした。相変わらず宙を見ていて移動したことも俺たちのことも気づいてすらいないようだった。そして、俺たちはこんなありえそうもない現実を目の当たりにして、変に冷静になってしまった。
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