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「よし、突然だが、今から席替えするぞ」
担任の言葉に、教室内はざわついた。
今日は11月24日。
この中学校では各学期始めに行う決まりになっていた席替えが、こんな中途半端な時期にあるなんて異例中の異例。
比較的大人しい子たちが集まっている2年B組の生徒たちであってもさすがに、
「えー」
「やだー」
「突然はずりーよ」
などと文句を付けている。
後に、この席替えの原因はクラスの誰かの親御さんで、その子がイジメられてるとかでどうしてもすぐに席を変えて欲しい、と強く要望した……なんて噂が流れたが、その真偽の程は不確かだった。
かくして、席替えは粛々と行われた。
配置は名前順でも背の順でも無く、完全にランダム。
「あーあ、トウマと離れちゃった」
古内大輝は、今まで隣同士だった親友との別れを嘆きつつ、机を持って指定された場所に引っ越しした。
「あーあ、ナツミと離れちゃった」
水崎美緒は、今まで隣同士だった親友との別れを嘆きつつ、机を持って指定された場所に引っ越しした。
大輝の新居は窓際の後ろから2番目。
美緒の新居はその右隣。
「あっ、どうも」
「あっ、こちらこそ」
ふいに目と目が合い、2人はぎこちなく挨拶を交わした。
すげぇ可愛い……ってわけじゃないんだけど、何か好きなタイプかも、と大輝は内心思っていた。
すごい格好いい……ってわけじゃないんだけど、何か好きなタイプかも、と美緒も内心思っていた。
それまでほとんど恋愛というものを意識して来なかった2人の間に、初恋が生まれた瞬間だった。
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