君について知っていること

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人間は光合成はしないと誰かつっこんで欲しいものだ。 育成されるのはビタミンDだと。 そんな桃子にも恋人がいた。 過去形なのはその男はもう桃子の側にはいないからだ。 「夢の為に頑張ってくる」とたいして上手くもないギターを片手に大口を叩いてでていった。 桃子は少しだけ寂しいそうな顔をしたが、私は大丈夫!いってらっしゃいと笑顔で見送っていた。 その後、アルバイト先に訪れた人づてにその男がもっと頭の弱そうな女と同棲していると聞いた時はこちらの腸が煮えくり返る思いだったが、桃子はビックリして「大丈夫だから、怒らないで」とこちらを宥める始末だった。 まったく桃子のお人好しには困ったものだ。 叶う事ならあの男に蹴りの1発も入れたい。 桃子はそんな事があってもいつもにこにこ幸せそうにしていた。 相変わらず不思議な女で、 「今日はカエルの卵を見つけたのよ!」 とか 「カエルがいっぱい道を走ってたから回り道したら遠かったねぇ」 とか 話しかけてきた。 そんな事で幸せになるならまぁ安上がりな女だ。 そんな女も途中から体がだるいのか、少しずつ仕事を減らし、途中で馴染みの店長に頼んで仕事を辞めることになった。 店長はハゲだが気のいい店長で、まぁ落ち着いたら顔出せよう!と快く送ってくれた。 いいやつだ。 早く嫁が見つかるといいと思う。 桃子は仕事を辞めてから余計によく歩くようになった。 昔はちょっとはあった7センチヒールがスニーカーになり森林公園からまた二つ先のドンキホーテまであるくようになった。 「あそこはいっぱいものがあって楽しいのよう」 といいながら桃子が買ってきた不可思議な鳴り物はうるさいので、不満げに脚を踏み鳴らしたら逆の方に捉えられてしまった。 ポジティブにも程がある。 そんな桃子がとてつもなく泣いた日の事を覚えている。 桃子は基本的あまり泣かなくてどちらかと言うとにこにこ笑っている女だった。 そんな女がボロボロ泣いてる様子は可笑しくって思わずわらってしまった程だ。 空気というものは恐ろしく固くて胸がいっぱいになる。大爆笑したつもりが全く笑い声になって無くてそれが不満で私は怒った。 本当にままならない!
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