2 想い出探し

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 父が立ち上がり部屋を出て行った。 「ほらしっかりして! 今日はあの日の続きをするんでしょ」 母があかりの姿勢を正し、涙を拭いた。あかりも気持ちを切り替えて姿勢を正して母の隣に、僕の写真が飾ってある仏壇に向き合った。  僕もなんとなく自分の仏壇に対面して座ってみた。変な感じだ。やっと死んだ実感が湧いて来た。  少しして父がロウソクを立てたケーキを持って部屋に入って来た。ちゃんとプレートまでついていて、それはまるで誕生日ケーキのようだった。プレートには『タダシくん誕生日おめでとう!』と書いてある。  そうだ、僕の名前はタダシだ。これは僕の誕生日ケーキだ。あの日、僕が死んだ日、あれは誕生日だった。 「あの時はとてもお祝い気分じゃなかったからな。すまんタダシ。1年越しの誕生日会だ」 そう言って父は仏壇の前にケーキを置いた。 「楽しみにしていたもんね」 母が悲しげに笑った。 「これ、誕生日プレゼント。本が好きだったから本はお棺に入れたんだけど」 あかりはそう言って仏壇に手作りのしおりを置いた。 「これがないとどこまで読んだか分かんなくなっちゃうもんね」  あかりは手芸が得意だった。僕があげた本についているブックカバーもあかりの手作りだ。 「さて、じゃロウソクの準備はいいか? 電気消すよ」  そう言って父はロウソクに火がついたのを確認して電気を消した。  ロウソクの火に照らされて仏壇がテラテラ光っている。 「ハッピバースデートゥーユー」 そうか 「ハッピバースデートゥーユー」 僕の未練は 「ハッピバースデーディアタダシー」 これだったのか。 「ハッピバースデートゥーユー」
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