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「おかえり」
「うん」
小さな玄関にフローリングの床が続いていた。出迎えてくれたのはこの人の夫らしい。40代くらいだろうかこの人も礼服だ。袋を渡して靴を脱いでいる女性の横を通って一足先にお邪魔させてもらった。
奥の部屋はリビングキッチンになっていて液晶テレビ、テーブル、ソファが置いてあった。白い壁紙が光を反射して明るい。玄関から2人がリビングへやってきた。
「あかり、おいで」
閉じている部屋のドアに向かって男の人が声をかけた。
奥さんはキッチンで何か始めた。
ドアが開いて中から礼服にツインテールのあかりさんが現れた。そのままあかりさんは廊下に出て手前の部屋に入って行った。あかりさんの部屋の中に写真の飾ってあるコルクボードが見えた。
悪いと思いつつも部屋の中に入った。部屋も机の上もきちんと整理されている。壁にかけられたコルクボードにはたくさんの笑顔があった。あかりさん、友達、お母さん、お父さん。そして、お兄さん。
ゆったりとした紺のスウェット、真っ黒なジーパン。僕と全く同じ格好だ。
でもミサンガをしていない。たまたま似たような服を着ているだけだろうか。僕はコルクボードから目をそらした。机の隣には小さな引き出しタイプの本棚があった。
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