2 想い出探し

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 見たことがあった。僕はこの引き出しを開けたことがある。初めての感覚だった。記憶としてはっきりしたものではないけれど、この感覚に懐かしさを感じた。  引き出しの隙間からたくさんの本が見えた。その中に1つだけブックカバーをかけたものがあった。そうだ……これは僕があかりの、妹のために誕生日プレゼントであげたものだ。  ここは僕の家だ。  あかりは6つ下の妹だ。  僕が死んだあの日、家族で公園に花見に行ったんだ。公園には屋台が出ていて、人もたくさんいてお花見ムードだった。このミサンガはそこでやっていたイベントで作ったものだ。  あかりは公園で遊ぼうと思ってサッカーボールを持って来ていた。でも人が多くてとても遊べる状況じゃなかったんだ。それでふてくされたあかりが蹴ったボールを追いかけて僕は……事故にあった。  少しずつ記憶を取り戻して来た。  その時、あかりのすすり泣く声が聞こえた。 あかりの部屋を出て、あかりの元へ向かうとそこには父も、母もいた。 僕はあかりのそばに寄った。 「あたしがっ……あたしがボールを蹴らなければ……」 こらえきれない涙を流しながらあかりは小さくそう言った。 「あかり、お前のせいじゃない! あれは僕の不注意だったんだ! 自分を責めないでくれ!」  叫ぶ声も虚しく誰の耳にも届かない。 「あかり、あなたのせいじゃない」  母が優しくあかりの肩に手を回した。 「気に病むな、間が悪かったんだ」  父も慰めの言葉をかける。自分に言い聞かせていたのかもしれない。 ひしひしと空気を伝って3人の気持ちが伝わって来た。 「ずっと後悔してた。あの時のこと。1年経ってもあの時の記憶は消えなくて、毎日毎日思い出しちゃって、思い出すたびに後悔して」 誰もあかりを恨んでなんかいない。もちろん僕もだ。だから、自分を責めないでほしい。一言でいいからあかりにそう伝えたかった。
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