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答えて曰く、あなたは父親が外国の妾腹に産ませた子であり、実母の死を受けてここに引き取られたのだ、と。
実母は自ら脳幹を鉛玉で貫いて死んだ。
どれだけ生活が困窮しようとも、不幸に見舞われようとも生きようとするものがいる。
いっぽうで、どれだけ裕福で、幸福に満ちていようとも死のうとするものがいる。
自殺する人間は精神の構造そのものが違うのだ。
実母は生活に困らないだけの資金を父親から貰っていたと聞く。
思えば、あなたは毎年の自分の誕生日のこと、歳を重ねるごとにケーキのロウソクを吹き消そうとする息の力は弱くなっていった。
不思議な感覚だと思っていたものはただの不快感であり、同時に倦怠感ですらあった。
つきまとうそれらの正体は無意識下の希死念慮がまとった隠れ蓑に過ぎない。
あなたは死にたかった。
多くの志願者がそうするように、あなたもまた誕生日に自殺しようとしていた。
中学生になってしばらく、あなたは本日、十三歳の誕生日を迎え、帰ればお祝いの準備もしてあるはずだった。
大雨が降っていた。
天も自分の選択を泣いて喜んでくれていると思う。
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