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「春姉......俺十八になったよ。」
『うん。そうだね。』
いやぁ、今振り返ってみると本当にイケメンになっちゃったなって思う。
昔はただの近所の素直な男の子だった優くんは一八歳にもなるとすっかり大人の男性だった。
もっとずっと大人の人から見たら、それでもまだあどけなさみたいなものがあるのかもしれないけど、広くなった肩幅も触るとごつごつと硬そうな腕や手も、自分なりに進路をしっかり考えて見据えるその面差しも。私には全てが尊く愛おしいーー
※ ※ ※
「僕、春姉ちゃんと結婚する! 僕が春姉ちゃんを守ってあげる」
「ありがとう。じゃあ優くんが大人になったらね」
「大人っていつ?」
「ん?、男の子だから十八歳かな? とにかく優くんまだ小ちゃいから、色々私に追いついたらかなー」
「わかった! じゃあ今日から毎日牛乳飲むね!」
私の生涯最初のプロポーズの結果は、何故か優くんが毎日牛乳を飲むというところに落ち着いてしまった。
もっとも、このプロポーズがあろうとなかろうと、優くんはこれから入学する小学校の給食で、毎日牛乳を飲む事になるのだけれど。
この頃の優くんはまだ六歳になりたてで、春の風に運ばれた花粉に鼻と目をグシュグシュにしながら私にそんな告白をしてきた。
それでも面と向かって好意を向けられたのは初めてだったので、三つか四つも歳下のはずの優くんに僅かながらにときめいてしまったのは内緒の話だ。
その時の私はまだ4年生になる頃にも関わらず、学区の子供の少なさから、毎日黄色い班長旗を持つ立場になって、今年同じ通学班になった近所の男の子、優くんの登校を引率した。
やんちゃな優くんを連れて行くのは最初は大変だったけど、そんな私の姿に好感を持って貰えたことが素直に嬉しかった。
しかしそこからの優くんのアプローチはものすごかった。
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