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私が中学校に入学する頃には優くんは四年生になった。
四年生になった優くんは朝早くから班長旗を持って、みきちゃんを待ってるらしかった。
「春姉ちゃ……春姉。すっごく綺麗だね。制服似合ってるよ」
「ありがとう、ほんとはセーラーが良かったんだけどね。私の地区はギリギリでブレザーなの」
この辺りの高校はブレザーの制服が多いので、せめて中学くらいはセーラーに身を包んで過ごしたかったのだけれど、それが叶わずやや落ち込んでいた私にとって優くんが素直にそう褒めてくれたのはとても嬉しかった。
どういう訳か、小学校で同じクラスだった男子は誰も何も感想を言ってくれないのだった。
「ゆうくーん!」
「おう! みきちゃんこっち!」
そう言って集合地に駆け寄るみきちゃんは、まるで西洋のお人形さんがゼンマイで動くみたいなたどたどしい足取りだった。栗色のボブカットがくるくるになったかわいい髪形に黄色い通学帽が乗っかっていてかわいかった。
「よし! それじゃあ優くん! 班長の任務、任せたよ!」
「おう! ってゆうか春姉もほとんど道一緒でしょう? 俺が二人とも連れてってあげるよ!」
そう言われてしまい結局私は中学の三年間も、優くんとみきちゃんと一緒に登校することになった。
優くんは私の事もその黄色い旗でしっかり守ってくれた。
だからかな? 順当に中学生活を終えた私は少し油断してたのかもしれない。
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