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通う中学からもほど遠くない高校に進学した私は最初のころはそれまでと同じように優君や美紀ちゃんと通学していた。
今度は小学四年生になった美紀ちゃんが班長になったのだけれど、美紀ちゃんの下の世代が一人も居なくて、実際は私と同じ中学に入った優君が班長継続みたいなものだった。
それにどうにも未だに足取りがおぼつかない美紀ちゃんが、誰かを引率する姿はどうにも想像しにくかった。
中学生になって優君はいっきに身長が伸びて、成績も学年で一番になったらしい。
バスケットボールを始めたらしく、体つきも良くなっていた。
「俺、将来は警察官になりたいんだ。誰かの安全を守る仕事に就きたいと思ってる」
「……凄いね! 優君どんどんおっきくなってるし、きっとなれるよ!」
衝撃だった。
実は高校に入ってからの私はどうにも成績が伸び悩んでいて、新しく出来た近くのセーラー服の高校に行きたいというだけで志望校を決め、およそ将来の目標なんてものを持ち合わせていなかった。
それにこの時期たまたま同じ高校の友達に中学生や小学生を登校する様子を見られてしまいなんだか恥ずかしい気持ちになっていたのだ。
「あのさ、春姉。今から少し話いいかな」
「あ、あのさ。その。これからはあまり外で話掛けないで。高校も別に一人で行けるし。だからその、ごめんね」
だからかな。高校三年の春。18歳を目前に近所でばったり優君に出くわした時私は彼から逃げてしまった。
私が交通事故で死んじゃったのはそれから一週間後の通学中だった。
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