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あぁ、しくじったなぁ、って今でも思う。
だって優君は明らかに優良物件じゃない?
顔もどんどんかっこよくなったし、成績も優秀で、将来は警察官なんでしょう?
それに、最後のあの会話。もし応じてたら私今頃どうなってたのかな?
今日もあの時の様に優君がいて、美紀ちゃんがいて、笑っていられたのかな?
『そっかわたし、ずっと優君にまもられてたんだ……』
「おはよう春姉」
『おはよう優くん』
なんてね。地縛霊になった私の声も姿も見えてないよね。
それでもこんな形でも毎日通学する優くんを見ていられるのは嬉しかった。
高校を卒業し、大学入学を控えた優君はやはり思った通りとってもかっこいい。
優くんは毎朝私に挨拶を欠かさずしてくれた。
定期的にお花を変えてくれたのがうれしかった。
女っ気が無さすぎるのが、嬉しくもあり、心配だった。
「春姉、俺は一八歳になったよ」
『うん。おめでとう』
「春姉より背も高いし」
『うん。本当に牛乳毎日飲んでたしね』
「成績もトップだぜ?」
『うん。えらいえらい。がんばったね』
「バスケだって選抜で活躍したよ」
『うん。すごいね。かっこいい』
「春姉……ずっと好きだったんだよ?」
『うん……ごめんね、ありがとう』
ずっと見てくれて、ずっと守ってくれて、ずっと一緒に居てくれてありがとう。
私も優君のことが、きっとずっと好きでした。あなたにずっと見て貰える私でありたかった。ずっとずっと一緒に居たかった。
申し訳なかった。
背格好もすっかり大人になった優君が、勉強もとってもがんばる優君が、面倒見が良くて責任感が強い頼りがいのある優君が。
今こんなにも悲痛に顔を歪め、目に溜めた涙を必死に堪え、奥歯を噛みしめ嗚咽を堪えてこの場、この私の事故現場に立ち尽くしているのは全て私のせいなのだから。
どうか。神様。この優しい少年を救って下さい。
私なんて早く忘れて、いつものようにやんちゃに元気に明るい毎日を過ごさせてあげて下さい。
きっと今の私は幽霊とか地縛霊とかそんな感じなんだと思うから。きっと神様とかも本当にいるに違いないのだから。だからどうか。彼に救いを。どうか。どうか。
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