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「優紀先輩!!!」
不意に、立ち尽くす少年の背後から、細く、透き通る様な声が私に届いた。
「……美紀ちゃん」
今年高校生になる美紀ちゃんは幼い頃はくりくりだったボブのパーマを今では綺麗に伸ばし、さらさらのストレートに手入れしていた。
たどたどしかった足取りは相変わらずで、華奢な体躯ではあったけれど、その体のどこからあんな大きな声が出たのかと驚いた。
呼ばれた優君は泣き出しそうな顔を向けられないのか私の方をじっと見たままだった。
「なに?」
「あのわたし、今日! 誕生日です!」
「そっか、えと、おめでとう」
「先輩わたし早生まれです!」
「え?」
『え?』
いったいこの子は何を言い出したのだろう?
そう思った瞬間だった。
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